怒りや嘆きではなく、自分から「好き」を伝えよう。

[第10回みみここカフェ イベントレポート]

Screen photo at the start

すべての人の「伝えたい」が歓迎される“スローコミュニケーション”あふれる社会を目指す4Hearts。その入口として定期開催しているのが、ダイアログイベント「みみここカフェ」です。

きこえない・きこえにくい方々、生き辛さを感じている方々が安心して困りごとを話せる場として2020年10月より回を重ねてきましたが、今回で10回目となりました。継続的に参加してくださっているみなさま、応援してくださっているみなさまに、心から感謝申し上げます。

今回は初参加の高校生の方に、常連参加者のみなさんが体験談を披露し、あたたかく包み込むような場面も。回を重ねてきたからこそと言える愛にあふれた場の空気を、ぜひ感じ取ってみてください。

※過去の「みみここカフェ」レポート
【第1回 2020年10月開催】障害をこえて誰もが心通じあえる社会は、つくれる。
【第2回 2020年12月開催】誰もが特性を持って生きている。“人と人”として向き合うということ。
【第3回 2021年2月開催】ごちゃまぜだからこそ、”自分”がわかる。わかりあえる。
【第4回 2021年4月開催】「あなたのことをわかりたい」。支援する側・される側、その想いが交わるとき。
【第5回 2021年6月開催】「聴こえる・聴こえない」「男・女」じゃなく、「私は私」。”2極の世界”から飛び出して、軽やかに生きるために必要なこと。
【第6回 2021年8月開催】笑顔の先に、あらゆる障害のない社会を見据えて。
【第7回 2021年10月開催】“適度な無関心”が居心地の良い社会をつくる。
【第8回 2021年12月開催】 図々しく生きていこう。その一歩が、“スローコミュニケーション”という文化につながるから。
【第9回 2022年2月開催】 「死」を語ること。それは、「生」を考えること。

 

「かけがえのない人」に出会える場所

2022年4月24日、春満開の陽気に包まれた日曜日の朝。オンラインの会場に顔を揃えたのは、10名の参加者のみなさん。4Heartsの活動拠点である神奈川県の方を中心に、東京都や長野県から、また、小学生や高校生の方から60代の方まで、実に多様な顔ぶれです。今回も手話通訳者2名、スタッフ4人とまずは挨拶を交わし、一人ひとり自己紹介をおこないました。

 

photo of a smile at the end of Zoom adjustment
今回は手話通訳2名に加え、聴覚障がい者向けコミュニケーションサービス「Pekoe(ペコ)」β版も活用し、
きこえに困り事を抱えているみなさんの情報保障を施しました。

  

最初に自己紹介してくれたユウさんは手話で名前を表現し、続くレイさんも、手話を使って名前や住まい、アイデンティティについて語りました。この様子に、スタッフもふたりを知る参加者のみなさんも少し驚いた表情に。なぜならふたりとも、参加し始めた当初は一切手話を使っていなかったのですから。

レイさんは「多様な方とお話ししたくて、少しだけ覚えました」と、控えめな発言。みみここカフェがきっかけで世界が広がっている様子に、スタッフ一同、喜びを噛み締めた瞬間でした。

若い参加者のふたりも、自分の言葉で自己紹介してくれました。

小学4年生のシンくんは、「耳はきこえますが、前回やってみて楽しかったのでもう一回参加しています」と語り、初参加の高校3年生・コナツさんは「人工内耳をしています。手話はあまりできません」と自己開示。コナツさんのお母様・ミエさんは、「いろいろな方とつながってみたいと思って、今回参加させていただきました」と、参加動機を披露してくれました。

そんな中、常連参加者のユミさんは、改めてこんな風に自己紹介。

ユミさん:私は40歳くらいからだんだんきこえにくくなって今はほとんど聞こえず、どう生活していいかとても迷っていた時に参加して、その後この会でいろいろな方とお話して。少しずつ、ここで会うみなさんのことがかけがえのない人になっています。

きこえに困りごとを抱えているみなさんにとって「かけがえのない人」に出会える場になっているなら、主催者としてこれほど嬉しいことはありません。あたたかな余韻を残しながら、みみここカフェ本編の哲学対話へと進みます。

「もう一回言ってくれますか?」で気まずい空気に…
  • 否定しない
  • 知識ではなく経験に基づいて話す
  • 話をしてもしなくてもいい

等、お互いを尊重するための哲学対話のルールを改めて共有したあと、参加者のみなさんに発言を求めると、珍しく短い沈黙が。どうやら常連のみなさんは、初参加の方に譲る気持ちが働いた様子。レイさんは「せっかくなのでコナツさんの話を聞かせてくれませんか?」と語りかけました。するとコナツさんは少し戸惑いの表情を浮かべながらも、話を切り出しました。

コナツさん:私が高校1年生のときからコロナでみんなマスクをしていて、何をしゃべっているのか全然わからなくて、ストレスが溜まっちゃいました。みなさんはマスクで聞き取れなかったときに、「もう一回言ってくれますか?」と伝えて相手と気まずくなった経験はありますか?そういうときどう切り替えているか知りたいです。

Konatsu's photo

コナツさんの問いかけに、ユウさん、那須、そしてユミさんが、それぞれに体験談を語りました。

ユウさん:私は左耳だけきこえているんですけど、コロナになってから、相手の口も見て話を理解していたことに気づきました。人とのコミュニケーションが辛くなってきたな、と感じます。身近な人には「もし私を呼んで反応しなかったら無視しているわけじゃないから肩を叩いて」と伝えていますが、たくさんの人がマスクをして一斉に話しているとやっぱりわからないときもありますね。

Yuu's photo

那須:わたしも同じです。普段から一緒にいる津金(4Hearts理事)の声でも、マスクをしているとわかりません。手話もしてくれるけど私は口元の動きも合わせて理解しているので、どうしてもわからなくて、マスクを外してしゃべってもらっています。仕事の打ち合わせのときも「すみませんけど外していただけますか?」とお願いしていますが、感染リスクもあるので申し訳ないと思ってしまいますね。

ユミさん:私は歳を重ねてからきこえなくなったので高校生のあなたとは状況が違います。でも経験から言うと、自分がきこえないことを伝えると、筆談してくれて相手の話が少しわかるようになってきたんです。高校生のあなたにとって自分のことを伝えるのも辛いことだと思いますし、相手の反応で辛い思いをすることもあると思います。でも同じ思いをしている人もたくさんいるので、その人たちがどうやって乗り越えていったか聞く機会があるといいですよね、勇気に変わると思います。

必ずわかり合える相手に出会えるから

3人の体験談に聞き入っていたコナツさんのお母様・ミエさんは、続いてこう問いかけました。

ミエさん:相手にお願いするときはやっぱり遠慮しちゃうと思いますが、どのように考え方を変えて頼んだらいいのか教えていただけたら嬉しいです。

那須は「私も今も葛藤しながらなのでうまく言えないですけど」と前置きし、こう伝えました。

那須:遠慮の気持ちは、どう思われているかなという不安から来ると思います。それを一度横に置いて、「私はあなたに伝えたいからこうしています」というスタンスでいれば相手は悪い気持ちにならないのかなと。「相手を理解したいということを伝えるのは悪いことではない」と考え方をシフトした感じです。

Nasu-san's photo
           

きこえるレイさんは、逆の立場からこう発言します。

レイさん:ぼくだったら「言ってよ」って思います。「言ってくれなかったら残念だな」って。言わないのは、相手に対してとても失礼なんじゃないかなって思うんです。

ぼくは自分のセクシャリティのこと(レイさんは「ジェンダーフルイドである」と自認しています)を誰にでも伝えます。それは相手が伝えても大丈夫な人だって思っているから。自分の特性が、相手とより深い仲間になれるきっかけになると思っているから。自分を伝えることは相手を大事にしますという意思表示だと思ってあまりビビらずに言っています。

続けてユミさんは、「必ずわかり合える相手に出会える」と、コナツさんにエールを送りました。

ユミさん:私は自己紹介で「かけがえのない人たちに出会えた」と伝えましたが、そのかけがえのなさは、まず自分のことを知らせることから始まったと思います。自分がきこえないということを相手にはっきり伝えないと、結局は自分の気持ちを伝えることも相手の気持ちを知ることもできないので良い関係をつくることはできないんですね。もちろん嫌な思いもするかもしれないけど、必ずわかり合える相手に出会える。そうすればその大きな壁を乗り越えられると思います。

自分から声をかけられるというターニングポイント

コナツさんの表情に安心感が生まれ始めると、今度は那須とアキさんが、幼い頃からの人生を振り返るように語り始めました。

那須:私は高校のときだけ聾学校に通っていて、小中学校は一般の学校でした。小中時代は私自身がきこえていないということがどういうことかわかっていなかったんです。自分がわかっていないから、相手に「困っています」とも伝えられなかった。

高校では聾学校でみんなが手話していて私だけわからなかったという状態になりました。他の人が走っているところを後ろから声をかけたら振り向いてもらえなくて、「自分もそうだ」って初めて自分の障害を見つめるようになったんです。だからまず、自分がどういう人間でどう生きていきたいのかっていうアイデンティティを見つめ直すと、みんなの前でどうあるかってどっしりと構えられるようになるのかなって今は思います。

高校で聾学校に入ってから自分自身を見つめ直したという那須に対して、アキさんは5歳からずっと一般の学校で過ごした経験を語ります。

アキさん:聾学校の幼稚部に3〜4歳のときだけ通いましたが、5歳から普通の幼稚園に転園して、そこからずっと小中高を健聴者の普通の学校に通っていました。元々難聴で補聴器をしていればほとんどきこえたんですが、友達や先生の声が全部理解できるかというとそうではなくて、「大体こんなことを言っているだろうな」って頭の中でつなげながら理解しているという感じでした。そうするとやっぱり、自分の気持ちをどうやって伝えたらいいのかもわからなくて。いじめられるんじゃないかっていう不安もあって、あまり自分では声を出さなかったですね。大人しく生活していました。

 

Aki's photo

アキさん:本当に今考えると、毎日苦しかったです。よく頑張って通ったなって思っています。今は相手の言っていることがわからないときは「きこえないので」と言って、スマホの音声認識アプリに向けて話してもらっています。私がおしゃべり好きなので私から話しかければ相手もしゃべってくれるかなって思っています。かなり前は、自分から声を出す場合は相手にどう思われるかなっていう不安がありましたが、今はあまり深く考えずに声をかけられるようになりました。

表情豊かに手話で語るアキさんに対し、那須は、「自分から声をかけられるようになるというのがターニングポイントになっていたりしますか?」と問いかけました。アキさんは「うーん」と考えながら答えます。

アキさん:やっぱり自分から声をかけないと相手がわからないですよね。私が声を出すと相手が安心できるのかなって。私はいつもおしゃべりしたいなという気持ちがあるのでそれで困ったことはないですが、やはりまずは声を出してみるっていうことですかね。

那須は、改めてアキさんに問いを投げかけた思いをこう語りました。

那須:小中学生のときの私は受け身だったんですね。相手の話を理解することで精一杯だったので、自分から話をしたり意見をするということが少なかったかもしれないと思って。高校に行って手話でみんなと話し始めてから少し変わったと思えるので、もしかしたら自分から話せるというのがターニングポイントになるかなと今思いました。

それぞれのターニングポイントに触れたミエさんとコナツさんは、ホッとした表情を浮かべながらそれぞれの思いを語りました。

ミエさん:娘はまさに今、アイデンティティを確立する時期なのでみなさんの話がすごく勇気になりました。受け身になりがちですが、自分を伝えることが、相手を尊重することや相手を知りたいって伝えることにもなるんですね。聞き直すのも勇気が必要ですが、みなさんは勇気をお持ちでそれを分けていただいた気持ちになりました。

コナツさん:中学のときはマスクがなかったから話せたけど、高校になってからはマスクでわからなくなって、ショックを受けたんです。

ミエさん:これからショックを受けたり困ったりしたときにどうやって乗り越えていくのか、とても参考になりました。

photo of Emi-san & Konatsu-san

ふたりの様子を感じ取ったレイさん、改めて感謝の気持ちがあふれた様子です。

レイさん:今日来てくださって嬉しいです。ありがとうございます。

変わるのは、周りではなく私。

その後も体験談は続きます。ユミさんは最近、考え方や周りとの関係性が大きく変化したことを自他ともに認めており、参加者のみなさんにも祝福されています。特にパートナーとの関係性は大きく変化したようです。

ユミさん:みみここカフェに最初に参加した頃の私は、「夫がわかってくれない」って言っていましたよね。私の夫は決して偏屈ではなくて優しい人です。でも私がどう伝えたらいいかわかっていなかった。ただ「きこえない」って伝えていた。でもそれでは、相手もどうしていいかわからないですよね。みみここカフェに参加して、そのことにやっと気づいたんです。

それに気づくまで夫はずっと悪者になっていましたが、今は私の方から「筆談してほしい」「手話も覚えてくれたらいいね」って伝えると、あらゆる手段を使って話してきます。すぐ鉛筆を持ってきてくれたり、筆談器を持ってきてくれたり。悪いのは夫ではなく私の方でした。一番身近な夫でもかなり時間がかかってしまいました。

那須は「自分が変わらないと」という意識の転換に触れ、それに気づく場の重要性について語りました。

那須:自分が変わらないといけないことはわかるのですが、どう変えていいかわからないのが一番の課題だと思います。そこに誰かが寄り添って一緒に話を聞いていく、みみここカフェのような場がたくさんできていくといいのかなと思います。

「場」とともに、情報も味方になってくれるとレイさんは続けます

レイさん:ぼくは子どもの頃から自分が何なのかずっと見えなくて、高校生の頃はアイデンティティの確立という言葉が大嫌いでした。でも今は、たとえば「ジェンダーフルイド」と伝えるとみなさんスマホですぐに調べてくれて、自分では説明できないことをウェブ上の情報や本が説明してくれていたりします。ぼく自身も本が味方になってくれて、自分は特殊じゃない、普通だと思えた。だからやっぱり自分から伝えることが大事だと思います。

自分から「好き」と伝えながら生きていく

ここでユミさん、勉強中の手話を交えながら話すレイさんの様子を見て、「私もそうなりたい」と切り出しました。

ユミさん:翻訳機や筆談で会話はできるようになりましたが、やっぱり気持ちを直接ぶつけ合うような話がしたいって思うんです。手話で話している方々は本当に心と心をぶつけ合っているように見えるので、私もそうなりたい。那須さんともそんなふうに話せるようになりたいって思っています。

レイさんは嬉しそうに言葉を受け取りながら、こう返答しました。

レイさん:多分、相手が好きかどうかだと思います。相手と仲良くなりたいって思ったら、ちょっとずつ手話も覚えられる。ちなみにまだ会ったことがないアキさん。長野にいつか行って話したいって思いました。一つ目標ができました。

アキさんは少し驚きながらも「嬉しいです。ぜひいらしてください」と答え、ユミさんも「私もアキさんに会いたい」と続きました。

レイさん:そういうことを積み重ねて生きていきたいです。「自分はあなたが好きだから話がしたい」「だからあなたもこうして」って伝えればいいんじゃないかと思いました。

行き交う「好き」「会いたい」という言葉に、那須は過去の自分との違いを思い返すように語り始めました。

那須:私は人を寄せ付けず反骨精神で生きてきたので、相手の言っていることがわからないし、わからない自分を認めるのも嫌だった。レイさんのように、自分から相手に好きを伝えるなんて、できていないと思っていました。改めて、自分から好きって言ってなかったなって思います。

「好き」とストレートに伝えるのは、勇気の要ることかもしれません。相手への信頼も必要です。でもユミさんは、「好きな手話がある」と、嬉しそうに語り始めました。

ユミさん:「好き」っていう手話がありますよね。それを10個集めるんです。1「私が好き」、2「友達が好き」って、10個好きを集める。そうすると、「幸せ」っていう手話になりますよね。

Yumi's photo
「好き」は右手の親指と人差し指で顎の下を挟むようにし、指を閉じながら下げます。「幸せ」も、動作は同じですが、人差し指、中指、薬指、小指を揃えて伸ばし、全ての指を使って顎を挟むようにします。これを2回繰り返して表現することもあり、指の本数が増えているのでユミさんは、「10個の好きで幸せ」と解釈されたのでしょう。素敵な捉え方ですね。

ユミさん:この手話がすごく好きで、一人でときどきやっています。私はみなさんより歳が上です。だからみなさんよりずっと厚かましいです。自分が嫌われるとか迷惑かけるとかいう認識も落ちてきます。青春時代よりもずっと楽に生きていける。でもそれはここまで生きてこないとわからないことですから、みなさんが今を一生懸命生きてくれたらいいなって思います。歳をとると楽ですよ(笑)。

「楽」という言葉を受けて、「それは自分の殻を破るということですよね」と切り出したのは、ミエさんです。

ミエさん:自分の殻を破ってさらけ出す覚悟みたいなものがあると楽になるのかなって思います。障がいのあるなし関係なく誰でも構えてしまうようなことがあって楽に生きるのはなかなか勇気がいりますけど、ユミさんを見習って自分を解放していきたいですね。

ここでみなさんの話に聞き入っていたエツコさんは、きこえない方々を支援する立場からこのように発言しました。

エツコさん:今までインクルーシブな社会を推進してきましたが、相手にこんなこと言ったら失礼じゃないか、お手伝いは迷惑じゃないかって気を回しすぎて結局何もやってあげられないということが起きてしまい、すごく気にしていたんです。

でも今日初めて参加させていただいて、ひょっとしたらみなさんの声は明日の私かもしれない、他人事ではないという認識を持ちました。そう考えると、こうしてもらいたいってことを素直にお伝えしたほうがいいのかなって。皆さんの率直な感情を聞かせていただいて、わたしたちができることをやるのは決して失礼ではないとわかったので、できることは自分からやろう、という勇気をもらいました。

Etsuko-san's photo

そんなエツコさんから、那須に向けて「手話は嬉しいものですか?手話ができなくても一生懸命話すと嬉しいですか?」と質問が投げかけられました。

那須:私はもちろん読唇もできるんですが、手話でも伝えようとか、手話がわからなくても身振りで伝えようという気持ちが前面に出ているとわかりやすいですし、すごくありがたいです。そういう人ばかりじゃない世の中だからこそ、ありがたい。

ここで聴覚障がい者向けコミュニケーションサービス「Pekoe(ペコ)」の開発を担当しているオノさんは、言語の壁を越える「気持ち」について語りました。

オノさん:海外のタレントやアーティストが日本に来てちょっとだけ日本語で話してくれると、それだけですごく嬉しい気持ちになりますよね。耳のきこえない人に対しての手話だったり、その人のフィールドにちょっと興味を持ってみるっていうのが嬉しいのかなって。かわいそうだから、支援しなくちゃという気持ちではなく、その人の使っている言語だからっていう気持ちが嬉しいんじゃないかと思います。

Rei-san's photo

確かに自分のフィールドに興味を持ってもらえるのは、悪い気がしません。「いつも逆の立場で考えている」と語るレイさんは、最後にこんな言葉を残してくれました。

レイさん:ぼくの中には、みんな違うんだ、違うところを楽しもうっていうマインドがあって、自分が楽しめるんです。違うから、違うところが面白いんだって。そういう感じでこれからも、人間以外の虫とかにも「そういう生き方っていいね」って語りかけるような生き方をしていきたいなって思います。

煮詰まっていた心の水面を動かしたもの

最後のチェックアウトでは、「好きが伝えられてよかった」「私も好きを10個集めてみたい」「新しい方と出会えてよかった」「またかけがえのない人に出会えました」と、愛にあふれた言葉が次々に飛び出しました。コメント欄にも、「好きを10個数える」というユミさんの話に共感する声がたくさん寄せられていました。

photo of Comments at Zoom's comment area

この愛は、小学4年生のシンくんも感じ取ってくれたようです。

シンくん:僕はきこえなくなったらどうしようって思っていたけど、逆にお母さんがみみここカフェで話しているの見ていいな、って思って。きこえなくなったときに、お母さんとかみんなみたいに思えるならいいな、って思いました。

Shin-kun's photo

人生の先輩たちの言葉を受け取った高校3年生のコナツさん、お母さんのミエさんも、最後にこう語ってくれました。

コナツさん:今日はまだうまく話せなかったけど、みなさんの体験談から新たな発見ができました。普段はもっとおしゃべりもできているので、また時間がかかるかも知れないけど、いつかここでもいつもの自分で話せるといいなと思いました。

ミエさん:煮詰まっていたのに、投げかけてもらって水面がちょっと動きました。たくさんの勇気を、ありがとうございました。

心の水面を動かしたのは、さまざまな体験をしてきたみなさんの怒りや嘆きではなく、愛にあふれたポジティブな感情でした。負の感情から社会は変わらない。ポジティブな感情から生まれる愛にあふれる空気こそ、きっと、社会を動かす力になる。そんな希望とともに、10回目のみみここカフェは、幕を閉じました。「また会おうね」という約束とともに。

photo of everyone's smile at the end

次回は、6月26日(日)に開催します。「ちょっと話してみようかな」という方も、「まずは聞くだけ」という方も。気軽に扉を叩いてみてくださいね。

お申し込みはこちらから↓

[文:池田美砂子(4Heartsサポーター)]

※プライバシー保護のため、対話の内容や個人名は一部編集しています。「みみここカフェ」では、参加者のプライバシー保護、情報開示の意志を尊重して活動報告を行っていますので、安心してご参加ください。