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『人工内耳とは』

 人工心臓や人工網膜などのように、世界で最も普及している人工臓器の1つ。医療目的によるサイバネティック・オーガニズム(Cybernetic Organism)、サイボーグ技術。

 聴覚障害があり補聴器での装用効果が不十分である人が、選択肢の1つとして人工内耳を選ぶことがあります。
世間ではまだまだ『人工内耳をすれば耳が聴こえるようになる』といった誤解がとても多いのですが、人工内耳の有効性には個人差が大きいです。残念ながら効果がない人もいます。

 さらに、手術直後から完全に聞こえるわけではありません。毎週のように通院し、しっかりと調整・リハビリテーションを行うことで徐々に音が形を成し、言葉として聞き取れるようになっていくことが多いです。1年以上の通院、以降は継続的に間隔を空けながら調整のための通院が必要なのが一般的です。そのため、計画性を持って臨まなければなかなか難しいでしょう。

 また、小児人工内耳適応基準・成人人工内耳適応基準といったように人工内耳手術には適応条件があり、誰でも手術を受けられるわけではありません。基準は都度見直しがありますので、検討されている方は、最新基準を担当医にお問い合わせください。

 

『聴こえの仕組み』

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 耳から入った音は外耳道を通り、鼓膜を振動させます。中耳には耳小骨と呼ばれる小さな骨が3個あり、その音を蝸牛に伝える役目をしています。

 蝸牛には有毛細胞と呼ばれる感覚細胞があり、ここに音の刺激が与えられると電気信号に変換されます。これが聴神経へ伝わり、脳へと伝えられて初めて、音や人の声として認識されます。

 中耳までの機能に問題がある伝音性難聴は手術で改善可能な場合がありますが、聴神経を含む内耳に問題がある場合は、現代の医学では機能回復が望めないと言われています。

 

『人工内耳の各パーツ名称』

(外部パーツ)
スピーチプロセッサを耳にかけ、送信コイルを側頭部後方にマグネットで付けることで装着する。マグネット部分は回すことで取り外しができ、頭皮の厚さに応じてマグネット強度を変更することが可能。

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(内部パーツ)
 耳たぶの後ろを約7センチ切開し、頭蓋骨を少し削って埋め込むインプラント。丸い部分が受信コイルであり、中心にはマグネットが入っている。そうすることで送信コイルと、頭皮を隔ててマグネットでくっ付くことが出来る。

 しっぽのように伸びた電極は、耳の内部の蝸牛に挿入されるもので、メーカーによって個数に違いはあるものの、先端に電極が20個前後連なっている。

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© 画像提供 株式会社日本コクレア

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© 画像提供 株式会社日本コクレア

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『人工内耳のしくみ』

 本来は、蝸牛に入ってきた音の刺激を有毛細胞で電気信号に変換し、聴神経から脳へと伝わることで音や声として認識します。

 人工内耳は、マイクで集音した音をスピーチプロセッサで電気信号に変換し、それを送信コイルから受信コイルに届け、電極を通って蝸牛にダイレクトに電気信号を届けます。そうすることで、直接聴神経を刺激しようというものです。

 人工内耳には「耳掛け型」と、小型で髪に隠れて目立たない「送信コイル一体型」があります。
それぞれにメリット・デメリットがあります。

例えば…
 耳掛け型の場合は、一体型に比べて落としにくいことや、湿気や汗などによる故障が少ない点が挙げられます。デメリットとしては、送信コイルのマグネットが強力なため、傘の柄などにくっ付いてしまったり、ケーブルが煩わしい、眼鏡やマスクなど耳にかけるものが増えると不安定なこともあります。ただし、イヤモールドをつけることが出来るため、安定感向上を図ることも可能です。

 一体型の場合は、髪の毛に隠れるためあまり目立たないこと、眼鏡やマスクなど耳にかけることが多い人には良いかもしれません。ただし、湿気や汗に弱く、髪の毛が擦れる音など余分な音が入ることもあるそうです。

 いずれも防水ではありませんが、水中でも装用できるようになる防水アクセサリが別売されていたりします。

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© 画像提供 株式会社日本コクレア

他にも、骨伝導タイプもあります。
 耳の後ろに小さなチタン製のネジのようなインプラントを埋め込み、そこにサウンドプロセッサを装着します。集音した音をサウンドプロセッサが振動に変換し、インプラントに伝えます。それが頭蓋骨を通して内耳を刺激することで、脳に音として認識されます。

 

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『術後の禁忌・注意事項』

精密機器を使用しているため、いくつかの禁忌事項があります。詳細は、メーカーなどによっても違いがありますので、かかりつけ医までご確認ください。

  • スピーチプロセッサの破損を防ぐため、静電気には気を付けてください。
    (例)スピーチプロセッサを外してから、
       毛糸のセーターを脱ぐ
    (例)車に乗り込む際、ルーフ部分に接触しない
  • 高周波や低周波を使用する電気治療は禁止です。
    身体に電流を流すようなものは基本的に避ける。
  • MRIは一部不可です。
    以前はMRIは絶対禁忌とされ、局所麻酔で頭部切開し、インプラントのマグネットを除去してからの検査でした。
    しかし、近年ではMRI対応人工内耳も登場し、一部のMRIで可能な場合があります。それでもインプラント部分の周辺は黒く映るようです。
  • 金属探知器に反応するため、人工内耳装用者カードを提示してください。
  • 人工内耳用リモコンを操作する場合は、心臓ペースメーカー装用者の近くで操作をしないでください。

  

 

 

株式会社日本コクレアに画像を提供いただきました。
参考 株式会社日本コクレア https://www.cochlear.com/jp/
一般社団法人 耳鼻咽喉科学会 http://www.jibika.or.jp/index.html