湘南茅ヶ崎の海を漕ぐ~SUPと出会い茅ヶ崎から全国のろう者に広めた
ヨネケンさんインタビュー(1)
(プロフィール)
ヨネケンさん(本名:米島建一郎さん)/ 神奈川県茅ヶ崎市在住。デフSUPの第一人者。アマチュアながらも数々の大会に参加し、数多くの成績を残されている。デフSUPチーム創設メンバーの1人。プライベートでは2人のお子さんの良きお父さん。
障害の有無に関わらず開かれる一般の大会に参加され、数多くの成績を残されているヨネケンさん。ご自身の生い立ちや仕事、SUPを通して体験された聴こえる人たちとの交流の中での困ったことや乗り越え方、父としてのお子さんとの接し方などを語っていただいた。
SUP…Stand up paddle surfing スタンドアップパドルサーフィンの略。サップ。
――今日はよろしくお願いします!お名前と経歴を教えてください。
米島 米島建一郎です。ヨネケンと呼んでください。よろしくお願いします。生まれつきろうです。手話は、学校で友達や先輩達の手話を見て覚えました。
――SUPとの出会いを教えてください。
米島 海でSUPをやっている人を見て私もやってみたいと思い、体験ができるところを探しました。実際に体験してみてとても楽しかったのではまりました。
――楽しかったのですね。SUPの魅力ってなんですか。
米島 もともと海が好きなんです。サーフィンなどマリンスポーツをいろいろやったんですが、SUPが1番魅力がありました。
――ダイビングとかではなくて、SUPだったのですね?
米島 はい。例えば今、後ろに海が見えますが、波があってもなくてもSUPはできます。川でも湖でもできる。SUPは場所にとらわれず、幅広くできることが魅力だと思います。
――海以外でもいろいろな場所でできるのですね!
米島 はい。海だとサーフィンの場合は浜に近い波のあるところだけです。SUPの場合は沖の方まで行くことができるんです。
――沖のほうまで行くことができるんですね。
米島 そうです。あの江の島の裏の方まで行くことができます。最高で20kmくらい行くことができます。
――それはすごいですね!そういえば、ろう者の中では米島さんがデフSUPのパイオニアの一人だと聞いたのですが、どうなんでしょうか(笑)
米島 いやぁ(笑)今はろう者でトップと言えば愛知。愛知はみんな強い。関東では私はもう歳だけど、今は若くて強い人がいます。それまでは私が1番でした(笑)
――いいですね! 1番嬉しかった賞はなんですか?
米島 平塚の大会での1位。総合で1位になったので1番嬉しかったです。
――すごい。海外の選手も来たりするんですか?
米島 茅ヶ崎で開催されるマイナビ主催の大会には海外の招待選手も出場します。
プロの部ではなくて私は一般の部で第3位になりました。それも嬉しかったです
――海外へ行ったことは?
米島 まだまだ。海外はレベルが高い。
――ろう者のSUPのチームがあるって聞いたのですが、いかがですか?
米島 はい。現在は約30人前後メンバーがいます。日本全国にいます。最初に始めたのは私たち茅ヶ崎の4人です。その様子を見て「自分もやってみたい」と言われるようになり、徐々に全国に広がっていきました。
――えっ、日本全国にやっている人たちがいるんですか?
米島 います!名古屋にもいる。大阪にもいる。沖縄にもいる。全国の皆が集まるのは無理だけど、大会などでは会うことができます。
――聴者のグループにも参加されるのですか?
米島 はい。大会には聞こえる聞こえないという聴力に関係なく平等に参加します。練習では聴者と一緒にやっています。コミュニケーション方法は、身振りや口話でわかります。指を指して向こうのところまで行くよって言われればその通りについていきます。コミュニケーションが大変とはあまり思いません。
――練習などの連絡方法はどうしているのですか?
米島 集まる日時、場所などは聴者との場合はFacebookに載るんです。それを見て自分で参加したいと思えば登録して参加するという方法です。
――聴者のグループではいろいろとコミュニケーションに困りますよね?ろう者だけのグループになると気楽だったりすることはありますか。
米島 まぁ実際ろう者だけで集まっていると気楽ではあります。聴者にはやはり気を使うこともあります。逆に聴者も言いたいことが伝わらなくて苦しいって思うこともあると思います。
――普段はどんな練習をされているのですか?
米島 場所は特に決めてないです。スマホなどで風や波を調べて、風が強い時は向こうの方とか、波が高いから今日はこっちがいいとかを判断して決めています。
――波が高くないほうがいいんですか?
米島 そうです。その方が練習しやすいです。
――そうなんですね。SUPでは体力や筋力も必要だと思うのですが、普段どのようなトレーニングをされてますか?
米島 SUPは立って漕ぐだけでは練習が足りないので、海で練習しないときは、家で腕立て伏せをしています。腹筋や体幹を鍛えることも必要です。長い距離を漕ぐためには持久力も鍛えなくてはなりません。少しでもいいので、走ることも必要です。
腹筋、背筋も大事です。他に腕の筋肉も必要になります。パドルを持ってこのように漕ぐので腕が疲れるんですね。腕や肩の筋肉も作る必要があります。
――全身ですね!
米島 そうです。全身です。バランスを取るために足も必要です。スクワットなどで鍛えます。仕事の都合もあるので、できるときに週に2、3回位やっています。
――すごいですね。他に食事など気をつけている事はありますか。
米島 食べる量には気をつけています。体重が重くなってしまうと沈んでしまうので丁度いい量にしています。
――活動費…例えばボード代、食費、アスリートみたいにいろいろなトレーニングジムのお金や交通費、大会の参加費などお金はかかりますよね?
米島 かかりますね。プロになればいろいろと援助していただけると思うけれど、個人なのでないです。
――体のコンディションや心の準備など大会前に気をつけていることは何ですか?
米島 必要です。例えば長い距離1.6kmなどに参加するときには前もって体を休めておく。手足などもほぐしておく。そして、慌てずに落ち着くようにします。動き回っていると不安になるのでゆったりと座って落ち着くようにします。
――なるほど。怖いと思ったことはありますか?
米島 それは人によって違いますね。
例えば大会の時に波が高いとします。波が高くて楽しいって感じる人もいれば、もう嫌だ苦手だって感じる人もいます。人によって違います。
――茅ヶ崎に来たのはいつ、どうしてですか?
米島 11年目です。それまでは東京にいました。海が好きで海の近くに住みたいって決めて茅ヶ崎に引っ越してきて11年になります。
――素晴らしい。海のために茅ヶ崎に引っ越して来たんですね!!
様々な失敗をしたこともいろいろとあったと思うんですが、どうやって乗り越えましたか?
米島 仕事の失敗はありました。その時の上司は聴者で、コミュニケーションがとれなかった。仕事で文章を書くことに関しては限界があります。聴者同士なら会話ができますが、筆談でのやり取りでは通じないことが多かったんです。何度も怒られて悔しい思いをしました。その時は、3、4回勉強になると思って書き直しました。
やはり手話でのやりとりではすぐに理解し、覚えることができる。上司が聴者の場合は筆談になります。筆談に時間がかかってとても苦しいです。
――文章よりも手話の方が深く理解することができるってことですよね。
米島 そうです。
第二弾につづく。
取材:那須かおり
撮影:津金愛佳
湘南の海を漕ぐ!湘南で活動するデフSUPの方にインタビュー!(聴覚障害にまつわる経験談)