聴覚障害者の困りごと~困ったときにその場で伝えることの大切さ~

デフフットサル女子日本代表インタビュー(3)

デフフットサル女子日本代表の主将・岩渕亜依さん、川畑菜奈さんへのインタビュー第3弾。前回はアスリートとして具体的にどのような考えを持っていらっしゃるのか、聴者に交じってプレーする際に気づいたことなどをお話していただきました。今回はスポーツを通した聴者との関わりの中で、自分の気持ちや困りごとを伝える大切さについてです。

デフフットサル女子日本代表インタビュー(2)↗
   

――聴者との関わりで困ること、悩むことはありますか?

川畑 中途社員の歓迎会兼私たちのスイスW杯の壮行会を会社が開いてくれて。その会場がカラオケだったんです。えっ?と思ったのですが、行きました。社員の何人かがカラオケの曲を入れていて、歌いますかって聞かれたのですが、2人とも「いいです」って断りました。普通に聞いてくれるのは嬉しいのですが、聞こえる人の前で歌を歌うのはちょっと抵抗がありますね。ろう者だけならカラオケには行くのですが、会社の人となると勇気いるよね。

岩渕 無理だね〜。

川畑 でも、特定の人だったら行くんだよね。

岩渕 うん後輩。

川畑 やっぱり聞かれたくない。歌ってるときの自分の声はあまり聞かれたくないし。

――私もです。

岩渕 今度3人でカラオケ行きましょうか?(笑)

川畑 いいね!(笑)

――ぜひ、行きましょう!(笑)

川畑 大学のときに1回だけ、サッカー部の新入生歓迎会で酔っている先輩に無理矢理「歌えー!」って言われて。そのときはしょうがなく細かい前置きをして。ほんとにめっちゃ細かいよ。まず声の高低の歌い分けはできない、自分なりにリズムに合わせて歌うことはできるけどそれが100%合っているとは限らないけどいいですかと聞いたら「気にしないから大丈夫!」と言われて。とにかく自分の中で1番歌いやすい曲を選んで歌ったら、多分、酔っ払っているからかあんまり気にしないで「うぇーい!」って終わったからまぁ良かったけど。
やっぱり歌いたいとは思わなかったね。

――そうですよね。

岩渕 健聴者の前で歌うのは難しいね、聞くのは好きだけど。

――何が得意ですか?

岩渕 失恋ソングでしょ?(笑)

川畑 多い…。チョイスがたまたま…。好きなものがそういう方向になるというか倖田來未のYOUとか失恋だし、EXILEのTi Amoも中身はあまり良くない…良くないって言ったらアレか。

岩渕 浮気。

川畑 浮気じゃなくて不倫でしょ。

岩渕 同じ…。まぁまぁ不倫ね。

川畑 なんか暗い曲が好きみたい。でも実際は暗い曲が全部好きなわけではなくて、そのときの気持ちに近い歌詞があったから好きになったっていうのが大きいのかな。カラオケに行ったら、だいたい歌ってるね。

――自分のことを表現して他者に伝えることについてご自身の体験、経験などを教えてください。

川畑 大学で1番実感したのは、やっぱり自分がどこからどこまでできて、どこからできないのかを言わないとみんなわからないんだなと思いました。同級生のコーダ(編集注:聴こえない親をもつ聴こえる子供のこと)の子がいなかったら、そういう楽しい大学生活は送れなかったなぁって思うし、その大学生活で友達も増えて仲良くなったから聞けたことがあって。「ぶっちゃけ、初めて私に会ったときどう思った?」って聞いたら、「手話がないとコミュニケーションが取れない」「普通にしゃべったら何も伝わらないって思っていた」って答えが返ってきました。他の友達にも聞いても似たような答えが返ってきて。
あー。やっぱり『耳が聞こえない=手話がないと何もできない』っていうイメージがあるんだって気づいて。

やっぱり私の場合は、対面で話すだけだったら全然普通に喋ってもわかるけど、多人数…ミーティングとか会議など5、6人で話すとなると、どこから話が始まっているのか分からない。

――分からないですよね。

川畑 そういう意味で、これだったら大丈夫だけどこれやったら無理って言うことを細かく言う必要があるなって思いました。

岩渕 私は小学校から健聴の学校に通っていて、初日の自己紹介のときに言う内容をお母さんに教えてもらって。
「私の名前は岩渕亜依です。耳が聞こえません。よろしくお願いします。」で終わりではなくて「呼ぶときは肩を叩いてください」「話すときは前に回って口を大きくゆっくり話してください」「机は真ん中の前がいいです」

川畑 へー。席の希望も言ってたんだ。

岩渕 うん。「自分で言おうね」って母に言われて、当日は母なしでみんなの前で、自分でしゃべってみんなに分かってもらいました。小学校のときは明るかった、高校に近づくにつれて暗くなっていくんだけど。(笑)

小学校のときは、スポーツがメイン。休み時間とかは遊びに出て行くから、コミュニケーションがいらない。だから分からないときは「なんて言ったの?もう一回言って」とか言えたんですけど、小学校高学年ぐらいになると、女子はおしゃべりになってくるじゃないですか。昼休みとかも外に行かないで、教室で話すっていう。男子は外に行くから、自分は男子のほうに行って。中学のときはソフトボール部に入ったから女子の部活。だから男子と遊ぶことが減っていって「おしゃべりについて行けん…」みたいな。最初は聞いていたんですよ。「なに?なに喋ってんの?」って。でも何回も聞くから、話が止まっちゃうじゃないですか。みんなの空気が変わるから。わかるじゃない。それで聞かなくなってから、大人しくなった。

でも話すことが必要なときもある。ソフトボール部なので、勝たないといけないから、そのために必要なときは困ったときにすぐに言うようにした。例えば逆光で見えないときある。口が。分かります?あるじゃないですか。そのときは「すみません、逆光で見えないんで、こっち行っていいですか?」とか。そこで「あ、逆光は無理なんだな」って分かってもらえる。

逆光で見えないっていうのは最初の挨拶で言ってもいきなり言ったらおかしいじゃないですか。「私は耳が聞こえません、逆光で言われてもわかりません」「えっ今?」みたいになると思うけど、困ったときに言うっていうのを積み重ねることで「あーこのときは無理なんだ」「あーこれは大丈夫なんだ」みたいに判断してもらって対応してもらえるかなぁみたいなのはありました。
やっぱり困ったらすぐに言う必要があるなと思いました。でもやっぱり言えないときもあるんですよ?怒られているときには言えないですね。

川畑 見えないです。って?

岩渕 そう。そうすると分かっていると思われるので。次もまた同じ事やるんですよ。そのときに言うと「なんで前は言わなかったんだ」って言われるのでやはり困ったときにすぐに言ったほうが、わかってもらえると思うし、だんだん言いにくくなると思うんですよ。

川畑 ああー、後回しにするとね。

岩渕 「今更?」「今までの何だったの?」となる前に困ったらすぐに言ったほうがいい。例えば、車椅子の人が椅子側に座るじゃないですか。ソファーには座れないじゃない。それに気づかなくて先に椅子側に座っていたら「ごめん、車椅子だからこっちでもいい?」って言われたとき「嫌だ」って言う人はいないじゃないですか。だから逆の立場で考えたら、言って欲しいなと思って。それで、その場で言うようになりました。

――それは自分で考えてすぐにそういう風になったのですか?それとも、ぼちぼちできるようになっていったのですか。

岩渕 割と自分の意見を小さいときから言ってたかも。あんまりそういう風に悩んだことがない。今、言っていいのかなぁっていうのは考える事はありましたけど。

川畑 何か言うタイミングがわからないっていうのはあるね。

岩渕 そうそう、タイミングがわからないのはありますけど。どうやって言ったらいいかわからないとかいうのは無いです。多分最初から言えてたのかなと思います。伝えることで悩んだことはないかも、タイミングくらい。

川畑 タイミングが…。今言っていいのかなぁみたいな。今言ったら話を切ることになるからな…みたいな。

――多いですよね。そういうのね。

川畑 向こうは「えっ?別にいつでもいいよ」って言われるんですけど「いつってタイミングわかんないんだよ〜」みたいな。(笑)

――4Heartsの活動、自己表現、自分自身の言語化を支援するサイトの存在と役割について、思うことがあればお聞きしたいです。

岩渕 最初に聞いたときに、あっそれいい!って思いました。そういう考え方、めっちゃ好き!とても興味ある!って思いました。
言語化って、ちょっと話は別ですけど、ろうの子供たちって日本語ができない。まぁ今もですけど、同年代も小さな子たちも日本語ができない人が多くて、できる人もいるけどできない人も絶対コミュニティーの中に1人はいるみたいなイメージがあって。語彙力も低いし自分の気持ちを言葉にすること自体が難しい人が多いのかなあって考えてて。なので4Heartsのお話を聞いたときに「あっいい!」と思いました。

だって、悲しい気持ちを伝えるときに「私は悲しい」だけだとどうして悲しいのか、どうしてその気持ちになったのか分からなくて対応が難しいじゃないですか。すごくいいと思いました。

川畑 私も今はいろんな経験をしてきたから言語化できて言えるようになったんですけど。小さいときは簡単に言う事しかできなくて「痛い」「悲しい」「イヤ」。本当、に簡単な言葉しか言えなくて、当然、親もえっ?なんで?って聞いているのに、自分はとにかく「イヤ」「イヤって思ったらイヤ」しか言えなかった時期があって。

実際に友達の子供がろうで。コミュニケーションがうまくいかないって話を聞いて。そのときになんで?って聞いたら、私と同じ状態。「イヤ」しか言わない。理由がわからない、みたいな話があって。母親としてどういう気持ちで言ってるのか知りたいのに、わかってあげられない、どうしたらいいんだろうみたいな相談があって。実際そのとき、色んなことを思っていると思う。けど言葉にできないって、本当に本人とっても、親にとってもすごい苦しいんだなって思ったので、そういう意味で言語化できるようになるって言う事はすごい大事かなって思った。

特に親は、私が発音がすごい苦手な代わりに、文章をすごい厳しく教えてくれた。そのおかげもあって健聴者と話すときに発音がうまくいかなくて伝わらなかったとき、筆談で伝えることが多くて、そのときに筆談もできないと、自分の伝えたい本当の内容も伝えられなくなるじゃないですか。そういう意味ですごく大事だなぁって思いました。なので、すごくいいと思う。

――ありがとうございます!これを見てくれている子供たちや親御さんへメッセージをお願いします。

岩渕 とにかく本を読む。いろんな人と話をする。いろんな人の話を聞く。わからなかったら聞く。調べる。大事だと思いますね。なんとなく伝わるからいいや、じゃなくて。

川畑  わからないから簡単な言葉に何でも変えるんじゃなくて。

岩渕  やはりわからないことをそのままにするのがよくないなと、自分をみても周りをみても思います。

川畑  積極的に調べたり聞いたりする習慣を身につけることがすごい大事かな。

岩渕  感想も言うようにした方がいいかもしれないね。

川畑  言わないとわからないよね。

――そのときに、例えば抵抗を感じる人もいるじゃないですか。自分の気持ち、自分の困っている悲しい苦しいっていう気持ちを、言うのも悔しいみたいな。いろいろあるじゃないですか。相手の言っていることがわからないっていうことが、負けているみたいな。自分が劣っているような気持ちに感じてしまって言えないとか。そういう子供に対しては、どう伝えますか?

岩渕 それはある程度大きくなった子供ですよね。まずそのわからないことが悪いんじゃないよって言うことを伝えたほうがいいと思うし、大人になってもわからないことがたくさんあるし、わからないことがあって当たり前。できないことがあって当たり前。ということを周りの人にも話してあげたらいいんじゃないかなと思います。

川畑 わからないから劣ってるって、思わなくていいと思う。

岩渕 わからなくてもその場でわかれば、もうその瞬間からわかっている自分がいるんで。その一瞬の、その気持ちを乗り越えて、やっぱり言ったほうが将来の為にもいいんじゃないかなと思います。すべて言わなきゃいけないっていうわけじゃないですけど。

――やはり簡単に言えてきたわけでは無いんですよね。気持ちを乗り越えてきて、今があるんですよね。

2人 うん。

川畑 言ったほうがお互いにとってもプラスに絶対になると思っているので。最初に言うのが、もしかしたら人によっては勇気が要ることかもしれないけれど、その先を考えたら言ったほうが絶対いいなって思います。

岩渕 最初の1歩だよね。慣れれば自然とできるようになると思う。

――最後にデフフットサル、デフサッカーで告知したいことがあればお願いします。

デフフットサルのW杯は3年後(2023年)です。応援して下さいね!
デフサッカーは今年(2020年)の9月にW杯があります。
来年(2021年)はデフリンピックの年です。フットサルもサッカーも応援してください!
(※編集注 デフサッカーW杯は延期になりました。時期は未定。WEBサイトでご確認ください。)

岩渕 書籍『アイ・コンタクト』出版しています。ナナさんが出ているんで、買って読んでいただけたらと思います。

川畑 探して下さい!

岩渕 この本はどういった内容なんですか?

川畑 2009年台北デフリンピックに行ったんですけど、そのデフリンピック本番までのいろんな選手の話が載っています。いろんな選手の生い立ちや、環境とかサッカーを始めたきっかけなどなど、見られるのでぜひ読んでください。

岩渕 あと、周りに聴こえない子でサッカーやフットサルやっている子がいたら紹介してください!

――本日は、ありがとうございました!

<インタビューを終えて>
お二人と話していると、サッカーやフットサルが本当に好きというのが、キラキラとした目の輝きや熱意から伝わりました。その中には、やっぱりコミュニケーションにおける試行錯誤があるのだけど、1つ1つ周りに伝えていきながら、今があるのだなと感じます。ろう者と聴者の声かけの違い、違ってもそれいいねとお互いに取り入れられる柔軟性が、スポーツにはあるのかもしれません。お二人の今後の活躍が、本当に楽しみです!

取材:那須かおり
撮影:加藤雄三
文 :津金愛佳
トップ写真:選手提供

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