かながわハイスクール議会2021 インクルーシブな議会を目指して

Photos of Mr. Furukawa and Miss Haraguchi


8月4日、6日、17日の3日間に渡って高校生議員がディスカッションをし、最終日に県知事に対して質問・政策提言をする『かながわハイスクール議会』

昨年はコロナ禍で中止となっていましたが、今年は参加者を減らし感染防止対策を実施の上で全日オンライン開催となりました。
主催は公益社団法人日本青年会議所関東地区神奈川ブロック協議会。共催は神奈川県神奈川県議会神奈川県教育委員会で今年15回目を迎えます。

公益社団法人日本青年会議所関東地区神奈川ブロック協議会共創者育成委員会がハイスクール議会を担当し、設営や運営まわりを実施しました。
ハイスクール議会OBOGの大学生が、ファシリテーターとして会議の議事録をとったりしながら高校生をサポートをします。
各委員でも高校生ファシリテーターを選出し、主な進行は高校生自身に任せます。

そんな高校生が主体性を持って取り組む「かながわハイスクール議会」に、今年初めて聴覚障害者の参加がありました。県立平塚ろう学校高等部の生徒2名です。
高等部1年 古川天斗さん
高等部1年 原口菜々実さん

彼らが自ら、参加したいという要望を出して参加が実現。
2人とも、幼稚部からほとんどをろう学校で学んでいます。だからこそ、聞こえる高校生との交流をとても楽しみにしていた彼らの勇気と、インクルーシブな議会の様子をお伝えします。

  

Photo of equipment installation

 

スローガン「かながわの未来の為に次世代のリーダーを育成しよう!

くしくも、代表の那須が神奈川県茅ヶ崎青年会議所に今年から入会。
ろう学校のサポートに入ってほしいとの要請を受け、共創者育成委員会に出向しバックアップさせていただくことになりました。

神奈川県庁で教育委員会に音声認識についてご説明。平塚ろう学校でも事前打ち合わせ。大学生ファシリテーターとの顔合わせ。共創者育成委員会のメンバーが心血を注いで準備をしてきました。

神奈川県庁とろう学校を、オンラインでつなぐための機材設営はこんな感じでした。

  • 学校の大型モニタ 4台
  • 学生がZoom参加するためのタブレット 2台
  • 手元でZoomの外部チャットに参加するためのタブレット 2台
  • 手話通訳さんが画面を見るためのタブレット 2台
  • 音声認識を表示させるためのPC 2台
  • モバイルWi-Fi 3~4

また、手話通訳も1日で最大6名派遣され、それぞれの委員会に3名ずつで対応しました。

 

1日目の午後から、高校生たちが、それぞれの担当する6つの委員会に分かれます。
高校生らしい発想による知事への政策提言をまとめるため、3日間話し合いました。

  1. 共生社会推進特別委員会(平等な社会を実現しましょう=SDGs目標10)
  2. 防災警察常任委員会(安全・安心なまちをつくりましょう=SDGs目標12)
  3. 環境農政常任委員会(かながわの豊かな自然を守りましょう=SDGs目標11・13・15)
  4. 厚生常任委員会(人権について考え誰もが尊重される社会をつくりましょう=SDGs目標5・10)
  5. 文教常任委員会(高校教育における多様な学びについて=SDGs目標4)
  6. 産業労働常任委員会(かながわの産業を盛り上げましょう=SDGs目標8・9)

 
今回参加されたお二人のそれぞれの委員会は下記です。
古川さん…共生社会推進特別委員会
原口さん…厚生常任委員会

 

 

初日はみんなまだ緊張感があり、高校生ファシリテーターも進行で精一杯。ろう学生たちもちょっと強張った表情をされていました。それでも1日目の終わりには、色々話せた!とキラキラした目で話していたのが印象的でした。

2日目以降は、硬さもとれてフレンドリーなディスカッションになっていきました。
ろう学校生も手話で積極的に意見を言い、通訳さんが読み取り通訳をします。

ひとつ私も勉強になったのは、ろう学校に「自立活動」という授業があること。
自分自身のことや進路・将来を考えたり、自身と同じ聴覚障害だけでなく、盲者や盲ろう者など自分と違ったハンデを持つ人を迎えて講演してもらったり、接し方を学ぶ授業です。

他の聞こえる高校生たちが、「社会に出て初めて障害者枠採用の人たちと会うよりは、学生のうちに知りたい。自分たちの学校も取り入れるべきだ。」と口々に言っていました。

3日目は、各委員会の高校生代表が県庁に出向き、神奈川県知事に政策提言書を手交。県知事も画面の向こうの高校生に語り掛けるように対応されていました。

Photo of a video conference with a sign language interpreter

  

今回、コンプライアンスの厳しいイベントなので内容はあまり書けませんが、2日目を終えて共創者育成委員会メンバー(平塚ろう学校設営スタッフ)の、感想を寄せていただきました。

現場での感想としては参加して頂いたろう学校の生徒さんは二人とも明るく、「余裕」があるなと感じました。素人の私に対しても大変協力的で、このような情勢の中、笑顔で事業に前向きに取り組んでいただいて、本当に設営のし甲斐がありました!

会議の中では沢山話題も振られ、リモート上でも平等に、そしてろうだけでなく何か抱える物がある人に対して、敬意をしっかりと表しながらコミュニケーションを取る高校生たちを、とても立派に感じました。かといって特別扱いせず、親しげに会議をしていて、隣で楽しそうにしている生徒さんを見るとこちらも嬉しくなりました。
議題が共生社会ややまゆり園についてというデリケートな側面を持ち合わせているにもかかわらず進行が滞る事なく会議が進む様を見て私も大変勉強になりました。

また、話をする側がマスクをしていることでろう者の方々は大変困っていること、ちょっとしたトラブルの時に伝達する術がジェスチャーや筆記ではなくまず「目を合わせること」なんじゃないかなって感じました。
ちょっと考えれば当たり前かもしれませんが普段そんなことは考えずに生活をしていることに気付かされました。
皆の意見を活かし、素晴らしい提言書が出来る事をこれからも応援していきます!!

JCI津久井 野崎裕介

神奈川ハイスクール議会2021に参加して感じたことは、オンラインになっても高校生のファシリテーション力、メンバーの意見をまとめて、提言書を時間内に作り上げていく姿は変わらず、すごかったです。
加えて今回は、平塚ろう学校からも2名の学生さんが参加するという日本青年会議所神奈川ブロック協議会としても初の試みを行いました。

結果は成功だったと思います。
学生2人の笑顔がそれを物語ってます。
彼、彼女らからは、参加してよかったという話とともに、手話ができる人だけの委員会があったらもっとよかったと前向きな意見をいただくことができました。
提言書に、視覚を通じて訴えかけるという、強いメッセージが反映される形となり、一緒に活動できてよかったと思った瞬間でした。
これからも彼、彼女らと共に歩んでいきたいです。

JCI平塚 田中純矢


まず、口の動きをみただけで話がある程度分かることに驚きでした。
それが分かるだけで、一気にコミュニケーションがしやすくなります。
それと、まったく聞こえないのか、少し聞こえないのかが分からなかったです。
それが分かると、ちょっとした時に、声を掛けるか前までいくのかの判断がつきやすいです。

それと、しゃべり掛けられるのが多いと疲れたりするのでしょうか?
「口の動きを見るのも返答するのも大変」などあれば知っておきたいです。
コミュニケーションをいっぱい取りたくても、もしかしたら疲れるのかな?と想像すると遠慮してしまいます。

今の状況下だと、初めて接する人にとって、マスクを外して「伝える事」と「感染予防」と思って「伝えない事」を優先するのか判断が分かれると思います。

JCI川崎 高野裕

 

Photo of a video conference during a cable TV interview

 

古川さんと原口さんそれぞれにも、全日程を参加してどう思ったのか、何を感じたのかを聞いてみました。

聞こえる高校生たちに混じって、社会課題を考え神奈川県知事に政策提言書を手交するハイスクール議会。最初は期待と不安が入り混じっていたかと思います。具体的にどんな気持ちでしたか

古川 委員会メンバー達には、どんな意見を持っているのか障害者についてどのくらい理解があるのかなど色々聞くのを楽しみにしてました!
聞いた結果、メンバー達は本当にいい人達で障害者について知識も深いし色んな意見を聞いてみて、障害者との差別をなくしたいって言う気持ちが強く伝わってきたことです!

原口 聞こえる高校生達がろう者に対して理解者が少なく感じたので、ろう者である私がその環境で私の意見を聞いてもらえるのかな、どうやったら伝わるのかな、ろう者に対して理解してくれるのかなと不安だらけでした。
期待したことは、このきっかけでろう者に対して理解を深めてくださることです。

 

いざ1日目、2日目を終えてどんな風に気持ちが変化しましたか?
こんな所が意外だったとか、どういった瞬間が「自分も関われている」と感じましたか?

古川 初めは、めちゃくちゃ緊張していたしその会話の輪に入れなかったけど、2日目は、メンバー達にはどんどん声をかけてくれたし質問とか沢山聞かれたので自分も嬉しくその会話の輪をスムーズに入ることが出来ました。

メンバー達に、ひとつ聞きました。
それは、「今までろう者と出会ったことはありますか?」
メンバー達からの答えは、バイト先でろう者と一緒に働いてるよとか、バスや電車で見かけるよとか同じ学校にもろう者がいるよという人が多くてびっくりしました。ろう者と出会うのは中々ないのに、当然会ったことがあるって言うことはびっくりした。

原口 1日目は不安だったのですが、2日目になると、不安は全く無かったです。1日目の私の気持ちは耳が聞こえないから見捨てられるんじゃないかなとかあったのですが、実際は全く違いました。健聴者のみんなは本当にろう者に対しての理解があって、スムーズに進んでいて、自分の意見も無事に発言することが出来て、気持ちよく、2日目を終わることが出来ました。
みんなに向けて自分が意見を言わせていただくことが出来て、こんな所が意外だったと思いました。

 

このハイスクール議会は、県庁職員、多くの青年会議所スタッフやハイスクール議会大学生OB、手話通訳さん、先生方、高校生議員など多くの人が関わっています。
そんな中で、あなただから出来ること、あなただから提供できる価値は何だと思いますか?

古川 私たちが出来ることは、今回のSDGsの中で環境だと思います。何故ならば、ビーチクリーンやボランティア活動など積極的に参加し、そういうのがあるんだよとみんなに伝えて呼びかけたりなどできるからです。

原口 健聴者ができて当たり前だと思っていることが実際に気づいてないところを気づいて、それを伝えること。それが私だから提供できる価値だと思っている。

 

これから社会でその価値をどのように発揮していきたいですか?今回のような聞こえる人たちと混ざってなにかをするような機会があれば、どのような気持ちで関わりたいですか?

古川 環境もいいみんなが住みやすい神奈川にしていきたいです。障害者のことやろう者について知識を与えていきたいっていう気持ちを持って関わっていきたいです。

原口 聴覚障害者に対する認識を高めていき、社会福祉の発展に貢献していきたい。自分が聞こえないから出来ないという弱音を吐かないで、ろう者としての誇りを持って積極的に取り組みたいです。ろう者の声を聞いて、それをしっかり反映して欲しいです。

 
 

彼らには、”たくさんの人にあれこれサポートしてもらわないと参加ができない”と捉えるのではなく、ちゃんとした環境があれば、僕だって私だって参加できるんだ、という成功体験を感じて欲しい――。
そこは彼らの指導教諭とも、とても共感しあった部分でした。

今回の参加がひとつのきっかけとなって、小さなことでもいいので何らかの形で繋がっていけたらいいなと思うし、繋げないといけないと思います。
それが出来るのは大人である我々であり、次世代が時代を作っていけるよう環境を整える責務があるのではないでしょうか。

そんなことを感じた、3日間でした。

 
 

『タウンニュース平塚版 8月19日号』に掲載されました。

【平塚版】平塚ろう生が政策議論|県内高校生がWEB会議|県内高校生による政策提言「かながわハイスクール議会2021」が8月4日・6日・17日に開催され、平塚ろう学校の古川天斗(たかと)さん(1年・四之宮)と原口菜々実さん(1年・藤沢市)が手話通訳を通…。
https://www.townnews.co.jp/0605/2021/08/19/587995.html

 

『湘南人』に掲載されました。

平塚市 高校生たちが政策を議論
https://shonanjin.com/hiratsukashi-highschool-discus/

 

今回のハイスクール議会の平塚ろう学校の模様が、ケーブルテレビで放送されます!
湘南チャンネル
10月2日18時~(予定)
http://www.scn-net.jp/shonanCH/top.html

 

Photo of Hiratsuka Deaf School participants in the High School Assembly

 

Photo of Hiratsuka Deaf School participants and Nasu-san

  

Kanagawa High School Assembly Poster Photo

 

 


取材:那須かおり