認定補聴器技能者の役割(その3)

~聞こえの課題をゼロにしたい補聴器屋のコラム~

Photo of hearing aid test

 

認定補聴器技能者の役割(その2)↗

前々回前回のコラムで、補聴器使用者の満足度が低いということと、日本には補聴器に関する専門家として認定補聴器技能者がいることを紹介いたしました。

おそらく「補聴器の専門家がいる日本で、なぜ満足度が低いの?」という疑問を持つ人もいるでしょう。 たしかに、相反している気もします。
「満足させられないのなら専門家って言っちゃダメじゃない!」
全くその通りです。
専門家と名乗る以上、満足してもらえるよう努めなければいけません!

私も認定補聴器技能者の一人です。満足度が低いのはとても悲しい事実です。
しかも私は、認定補聴器技能者の養成課程において教える立場でもありますので、責任を感じます。
何とかしてこの課題を克服しなければなりません。

満足度が低い問題は、「満足させられないその販売員(専門家)が悪い!」と、その個人のせいにするのは簡単なのですが、おそらくそれでは解決しないと考えています。
補聴器を購入するときの仕組みに何か解決しなければならない課題はないのかということを考えました。
そこで至ったのは、2つの課題です。

1つは補聴器を販売する者が、いま一度、基本に立ち戻るということです。
具体的には"しっかり知識をもって適切な評価をして補聴器を選定しましょう!"ということです。

もう20年以上前になりますが、その当時は補聴器から出ている音の大きさがどのくらいなのかは、音の大きさを測定する専用の機器である周波数特性測定器を使わなければ視覚で確認できませんでした。
お客様の聴力レベルから自分自身で計算して、それぞれの周波数でどのくらいの音の大きさが必要なのかを導き出し、小さなドライバーを使って補聴器のある調整器を回し、音の出力を設定する。いま思えば、結構、職人芸のような作業ですね。

現在では、補聴器はすべてパソコンにつないで調整を行います。補聴器を調整する専用ソフトにお客様の聴力レベルを入力して、補聴器の器種を選ぶ。すると自動的に専用ソフトがその方に応じた音の大きさを計算してくれて補聴器の出力を設定してくれます。なので、補聴器の出力をどのくらいにするかというより、ソフトの使い方を覚えることで精いっぱいになっている販売員も多いと感じます。

100%の言い訳ですが、昔と今では、補聴器を取扱う担当者が覚えなければならない知識の種類や量、あとスピードが違います。技術の進化は、昔に比べると10倍以上の速さで進んでいます。そのスピードについていくのが大変なのは事実です。

でも、

どのような高性能の補聴器を選ぶにしても、耳に着けるということは今も昔も変わらないことなので、『聴覚学』、『音響学』、『障害者心理学』などの基本的な知識は普遍的なので最初に勉強しなければなりません。
この基本知識があるうえで、補聴器のフィッティング方法や評価方法を身につけ、さらに最新情報を得て難聴者の方へサービス提供することが求められています。
認定補聴器技能者は、このことを常に追い求めなければならないことをもう一度思い出して欲しいです。

 

そしてもう1つの課題は、もっと多くの人に耳の聞こえについての情報や知識を知っていただくことです。
補聴器に対する満足度は、市場の調査ではとても低い結果になっています。ただ、私の知る限りでは補聴器関連で仕事したことがある人、元補聴器メーカー勤務の方は元補聴器販売店の方が補聴器を着けた場合、市場調査の結果ほど満足度は低くありません。これは、ただ単に補聴器のフィッティングが適切に行われているからだけではなく、耳の聞こえに関する情報・知識を知っているかどうかの差ではないかと私は考えています。さらに、その方々は補聴器ができること、できないことも知っていて、過度に補聴器に依存したり要望したりしていないことも理由のひとつだと思います。

多くの方が、音を聞き取ったり、言葉を理解したり、自分にとって不要な音を頭の中で排除したりを自然にできるようになっていますが、その仕組みをご存じの方は多くありません。専門的に学ぶ必要はないと思いますが、“何となく知っている”程度でいいので情報、知識を得ているだけでも変わってくると思います。情報、知識を持っていることで補聴器だけでカバーしきれない場合の対処方法が分かって、生活の中で不便になるケースも減ると思います。

情報や知識を上げることは、満足度を上げることには直接的につながらないかもしれません。ただ、不満に感じることのいくつかをつぶしていく効果はあると信じています。

毎年、認定補聴器技能者は3~400人のペースで増えております。
多くの認定補聴器技能者が、この資格を取ったことをゴールにするのではなく、高い志をもって常に自身を研鑽し続けて、耳の聞こえに困っている方のお役に立てることをゴールにして補聴器販売に従事してもらいたいと思っており、またそれが実現できるよう日々頑張っております。

 

著者:平野幸生

JINO株式会社
取締役最高執行責任者
認定補聴器技能者
日本補聴器技能者協会 理事

補聴器業界一筋27年。
外資補聴器メーカーのプロダクトマネージャーを経て2020年2月に補聴器専門店「耳のそうだん室JINO」をオープン。
「聞こえの課題をゼロにする」を合い言葉に、聞こえない劣等感を感じない社会の実現をめざし奮闘中。
耳のそうだん室JINO https://jino33.com/ (明るく広い店舗で皆様のご相談を待っています)


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