手話言語法と手話言語条例について

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『手話言語法』とは

 2006年12月、国連で採択された「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)で、「手話は言語である」と定義されました。これは手話が音声言語と同じように「言語」として国際的に認知されたことを意味します。

 日本では2011年に「障害者基本法の改正法」、2012年「障害者総合支援法」、2013年「障害者差別解消法」が成立。こうした国内法の整備がなされたのを受け、2014年1月に「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)が批准されました。

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障害者基本法の改正法
障害者の自立や社会参加の支援等のための施策に関して基本原則を定め、国や地方公共団体等の責務を明らかにし、障害者の自立及び社会参加の支援等の為の施策の基本となる事項を定めている。

障害者総合支援法
障害者・障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、総合的に支援するための法律。

障害者差別解消法
障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項を定めるとともに、行政機関や民間事業者に差別的取り扱いを解消すべき法的義務を課し、合理的配慮の提供については行政機関等に法的義務を課している。

 

 しかし、これら国内法では「差異の尊重」「障害のある児童がそのアイデンティティを保持する権利」について明確な規定がなく、対応しきれているとはいえないのではないか。そういった提言から、それらを明確にした法律である『手話言語法』の制定が望まれています。
 特に、口話法教育によって教育現場で手話の使用が禁止されてきた歴史があるということ、日本手話に対応できる教員が少ないこと、人工内耳装用児の間でアイデンティティの葛藤が生じている場面が増えているということも鑑みると重要な意義がある、とされています。

 

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 手話言語法では、以下の5つの権利を保障することを求めています。

1 手話言語の獲得
  手話言語を“身に付ける機会”を保障する
2 手話言語で学ぶ
  ろう者の“学習権”を保障する
3 手話言語を習得する
  手話言語を“教科”として学ぶ
4 手話言語を使う
  手話言語を“誰でも気軽に使える社会”にする
  ・手話言語が、音声言語と対等に使える制度と環境をつくる
  ・手話言語の通訳者を早急に増やす
  ・ろう者の社会参加を支援するため、手話言語通訳制度を拡充させる
  ・手話言語によって、命を守り、情報を保障する
5 手話言語を守る
  手話言語の語いを増やす、保存する、研究する

 

 

手話言語条例の制定

 国の法律制定につながるということもあり、地方自治体では『手話言語条例』制定の動きが広がっています。

条例成立自治体
29道府県/13区/262市/52町/1村
計357自治体
(2020年8月現在)

条例成立自治体 
36都道府県/19区/344市/94町/5村
計498自治体
(2023年7月14日現在)
全日本ろうあ連盟より https://www.jfd.or.jp/sgh/joreimap

 「条例」とは国の法律とは別に、地方自治法の規定に基づき、地方自治体が定めた独自の規則です。手話言語条例を制定した地方自治体では手話を言語と認めた積極的な施策が展開されています。

 また、2016年6月に「全国手話言語市区長会」が、同年7月に「手話を 広める知事の会」が設立されています。


世界各国の手話に関する法規の状況

憲法で手話を認知ウガンダ、フィンランド、南アフリカ、ポルトガル、ベネズエラ、オーストリア、エクアドル、ケニア、ジンバブエ、ハンガリー
手話を認知し、手話について規定した法律を制定スロバキア、コロンビア、ウルグアイ、ブラジル、スロベニア、ベルギー、ニュージーランド、キプロス、チェコ、スペイン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ハンガリー、マケドニア、カタルーニャ(スペインの自治州)、ポーランド、イタリア、フィンランド、セルビア、韓国
その他の法律で手話を認知ラトビア、エストニア、スウェーデン、アイスランド、ノルウェー、デンマーク

  

参考
全日本ろうあ連盟 手話言語法制定推進  https://www.jfd.or.jp/sgh

田門浩 「手話言語法の法制化をめぐる考察 人権擁護との関連から」 『手話学研究』第23巻(2014年)