“大切なのは、相手を気遣う『想像力』”
『聞こえる聞こえない世界をつなぐ記事をつくるプロジェクト キックオフ』

イベントレポー ト

Photo of participants at the start

 

こんにちは!4Heartsでは、記事を初めて執筆する、”つつみ けんいちろう”です。普段は都内の企業で働く会社員ですが、時々、湘南界隈の活動にお邪魔させてもらっています。

みなさんは、『聞こえる人』でしょうか?『聞こえない人』でしょうか?みなさんの周りの方はいかがですか?
私は今も昔も『聞こえる人』ですが、家族や親戚には年を重ねて『聞こえない』まではいかずとも、『聞こえにくい』という人は増えてきました。

あらためて考えてみると『聞こえない』というのは、聴覚障害だけでなく、加齢によって耳が遠くなったり、突発性難聴だったり、いろいろな形で身近に存在していることに気づきます。

  • 『聞こえる世界』と『聞こえない世界』ってどう違うんだろう?
  • どうやったら2つの世界をつなぐことができるのか?

そんなことを、7/18(日)に開催された、『聞こえる聞こえない世界をつなぐ記事をつくるプロジェクト』のキックオフイベントのレポートを通じて、一緒に考えてみませんか?

イベントには、
・生まれつき耳が聞こえない方
・手話ダンスを習っているお子さん
・高齢者施設で働く方
・自閉症の甥っ子がいる方
など『聞こえる』・『聞こえない』、両方の世界から、幅広い年齢の方が参加されました。

参加した理由を伺うと
「どんな人にも寛容で、ごちゃまぜで過ごしている世界を作りたい」
「聞こえないのは、どんな気持ちか理解してもらいたい」
「手話を勉強中。聞こえない友達の気持ちをわかるようになりたい」
「甥っ子が自閉症なので、社会に出るときに障害にならないようにしたい」
など、身近で『聞こえる』・『聞こえない』の2つの世界があることに、みなさん課題を感じているようです。

イベントでは、まず疑似的に聞こえない状況を作って、「買い物をする」「みんなで雑談をする」という、2つのことを体験してみました。そのうえで、どうやったら『聞こえる人』と『聞こえない人』が、お互い過ごしやすい世界をつくるにはどうしたらいいか、ディスカッションをしたので、その様子をお届けします。

 

“手話特区構想”から”スローコミュニケーション”へ

まず4Hearts代表の那須から”スローコミュニケーションプロジェクト”について、説明がありました。

もともと、4Heartsでは茅ヶ崎市で”手話特区構想”を掲げていました。聴覚障害がある方でも安心して過ごせるように、例えば、店員さんに最低限の手話を覚えてもらい、そのお店にステッカーを貼ってもらう、というようなイメージです。

しかし、想像力を膨らませてみると、コミュニケーションに困っている人は聴覚障害の方に限らないことに気が付きました。

たとえば、
・耳の遠くなったお年寄り
・対話に困難を抱える人
・外国語を話す人
・恥ずかしがり屋の子供
などです。みなさんの身近にも、実はコミュニケーションに困っている人が存在しているかも知れません。

実際に、スターバックスに指さしメニューを置いてもらったら、聴覚障害の方だけでなく、自閉症や発達障害の方からも助かるという声があったそうです。

このような気づきから、4Heartsでは新たに「スローコミュニケーションプロジェクト」を発足しました。
聴覚障害の人に限らず、コミュニケーション手段も手話だけでなく、筆談・言語・指さしなど、色々な方法を歓迎する社会を目指して、神奈川大学・NPO法人湘南スタイルと共同で研究を始めています。

Poster of Slow Communication Project

※スローコミュニケーションプロジェクトに関する詳しい情報はこちら
https://4hearts.net/tag/slow-communication/

 

  

『聞こえない人』の買い物は、恐怖と戸惑いだらけ

イベントでは実際に『聞こえる人』が『聞こえない世界』を体験してみます。耳栓とイヤーマフをつけて聞こえない状態につくり、徒歩1~2分のコンビニで買い物をしてみます。危なくないように2人1組になって、一人はサポート役となります。

まずは道を歩いて、コンビニへ。みんな音が聞こえないから、いつも以上に周りをキョロキョロ。

Experience at a convenience store

実際に商品を選んで、レジでお会計。店員さんに「袋はいりますか?」と聞かれましたが、当然、伝わっておらず、無言で支払いをして、無事(?)、商品を購入。

Product selection at convenience stores

Purchase products at convenience stores

私も実際に買い物を体験したのですが、まず感じたのが”恐怖”。いつもは感じるはずの人の気配を全く感じないんです。棚の影から人が出てきてビックリしたり、後ろに人がいるのもわからないので、常に周りをキョロキョロ・・・

電気自動車のエンジン音が静かすぎて、角から急に車が出てくるとビックリする感覚と表現したら、伝わるでしょうか?聴覚障害の方が、「茅ケ崎は自転車が多いので、後ろから急に自転車が出て来ると怖い」、と言っていた気持ちが少しだけ、わかった気がします。これが生涯続くと考えると、その恐怖とストレスたるや、想像を絶しますね・・・

もう一つ感じたのが、”戸惑い”。店員さんの目を見ると何か言ってそうだけど、マスクをしているから話しているかどうかがわからない。電子マネーで決済しても、音が聞こえないので、決済が終わったかどうかわからない。スマホの表示が「決済完了」になって、レシートが出てきたときに、やっと支払いが終わったことがわかります。残高不足になろうものなら、大パニック間違いなしですね・・・ レジで注文が必要なコーヒーやアイスは怖くて買うことが出来ません・・・

 

楽しいはずの雑談で感じる孤独

続いて体験したのは、聞こえない状態で、みんなの雑談に参加すること。
参加者のうち2~3人だけ、耳栓とイヤーマフをした状態で、全員の雑談に参加してみます。

 

Conversation with earplugs
4Hearts代表の那須かおり

 

こちらも実際に体験をしてみたのですが、とにかく”孤独”を感じます。みんなマスクをしているので、誰と誰が話しているかがわからない。何となく全員の目線が自分の方に向くと、何か発言を求められている気がするけど、どうしたらいいかがわからない。楽しいはずの雑談なのに、孤独を感じて、その場にいるのがつらいし、神経をつかうのでドッと疲れます。

でもこれって、自分の周りでも起きているかも知れないし、自分が将来おなじ環境に身を置くかも知れないんですよね。加齢によって耳が聞こえにくくなることは誰にでもあること。聞こえにくくなると、今まで楽しかった家族との団らん、友達とのおしゃべりが楽しめなくなるどころか、つらくなることだってあり得ます。

 

大切なのは相手を気遣う”想像力”

2つの体験を通じて、参加者みんなで感じたことを共有し、どうすれば『聞こえる人』と『聞こえない人』が、どうしたらお互い良い生活が出来るか、ディスカッションをしました。

「聞こえないことがわかれば、サポートできるので、何かマークがあればいいのでは?」というアイディアが出ましたが、聴覚障害がある方からすると「抵抗感がある」そうです。マークをつけることが差別につながる危険性があり、実際にマタニティマークですらイジメられる可能性があるから、つけない方もいるという話も出ました。

サービスを提供する側からすると、「相手が聞こえないとわかれば、サポートできるのに」と思っているけど、本人たちは「聞こえないことを主張したくない」と思っていて、ズレが生じてしまっているようです。

「どうすればいいのか、難しいな・・・」と思い始めた時に、ある参加者の方の言葉にみんなが共感しました。

「聞こえる・聞こえない、だけじゃなくて、色んな障害・病気を持った色んな人がいる。みんなあたり前に元気という考え方じゃなくて、ゆっくり歩いている人がいたら、”遅い”じゃなくて、”足がいたいのかな?”と思いやれる人に、子供にはなってほしい。何かあるのかも知れない。遅い理由、おっきく話せない理由、スムーズに何かが出来ない理由。」

色々なツールやマークを準備する前に必要なのは、「相手が何かおかしいな?」と感じたときに、“想像力”をもって接する文化なのかも知れません。

今回、イベントに参加してみて、わずかな時間だけでも”聞こえない体験”をすることで、「自分のすぐ近くに”聞こえない世界”があるかもな」と想像するキッカケになりました。想像力を働かせるために、色々な”聞こえない体験”を知ることから、みなさんも始めてみませんか?

イベント参加者の声

最後にイベント参加者の感想をご紹介させていただきます。みなさん、それぞれの視点で気づきや、考えるキッカケを得られたようです。

「違いを示すのでなく、違いを違いと感じない、感じさせない世の中になることが大事だと気付きました。」

「困ってる方にやってあげようと、親切心からの上から目線に感じられてしまうことに、ショックだった。
ただ、難しいコミュニテケーションだからこそ、解決しなければならないと思いました。
解決という言葉も相応しくない、自然にコミュニケーション出来るように、もう少し考えます!」

「今回、体験させて頂いて感じたことは、当たり前のことが、全ての人にとっては当たり前じゃないということを、多くの人に知ってもらいたいと思いました。
気持ちにゆとりを持つことはなかなか難しいかもしれないけど、一瞬で決め付けないで、ちょっと考えるように行動して行けたらいいなと思います。」

「今回の体験を通して、聞こえる人が少しでも「聞こえないってどういうことなのか」体感し、考えてくれたことがとても嬉しかったです。」

「数分間の聞こえない体験。ペアを組んだ方はお金を落としても気づかない。お店の方の話はわからない。料金?もちろんいくらかわからない。

分からなくて思わず、え?って、耳を近づけて聞き返す。あ。そうだ、聞こえないんだったっけ。けど…これだけ出せば足りるだろう。

1人で皆とはぐれることは怖く、皆の近くから離れられず…。帰りも、後ろを歩いているはずの友人が、本当についてきているのか不安になって何度も振り返り…。

外した時の感想は 『はぁーーーっ。』
ほっとした。が正直な感想でした。

私こんなに音に頼って生活していたのか?とちょっと驚きました。
友人の感想をきっかけに、それでも聞こえる自分達には、コンビニの音のイメージが流れている中で数分間で終わるーって思っている中で感じた、本当に仮の仮の世界だったなぁ…と気づきました。
私も会計の時袋や細かなことは聞かれなかった様に思います。レジのお姉さんが、実験中みたいだし、細かなことは聞かなくていいやと思ったであろう様に、

受ける側の私も、頭のどこかで少しの間だから、金額わかんないでもok…。
レジのお姉さんから袋の要不要聞かれなくてもok… と、ちゃんと伝わらないって、考えてしまっていたんじゃなかろうか。

もし叶うなら、この聞こえない状態で動物園に行ったり、食事をしたり、学校に行ってみたり。
半日、1日ともっと長い時間体験をしないと伝えたい、伝わらないのイライラ煩わしさはわからないと思いました。
そしてそれがずーっと…一生。私には音のない世界は、やっぱりまだまだ想像がつかないです。

もっともっとお互いの気持ちや考え方を知ること。相手の気持ちになって考えること。
けどそれって、障害があってもなくても、日本人でも外国人でも、男でも女でも同じですよね。
色々な人がいるということを頭に置いて、優しい配慮をしていくことが大事だなと思いました。」

[文:堤 健一郎]

  

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