手話通訳になるには
手話通訳ってなに?
手話通訳とは音声言語である日本語を話す人と視覚言語である手話を話す人のコミュニケーションをつなぐ存在です。
聞こえない人のためだけに手話通訳がいるのではありません。
手話のわからない人が、手話を使う聞こえない講師の講演に参加したとします。この場合、手話通訳が手話を読み取って会場の聞こえる人のために日本語にします。手話通訳がいなければ、手話が分からない人にとっては内容がわかりません。
学校の三者面談に来た生徒のお母さんが手話を使う聞こえない人だとしたら、この場合はどちらに手話通訳が必要になるのでしょうか?お母さんだけでなく先生にも、もしかすると子どもである生徒にも手話通訳が必要ではないでしょうか?
このように手話通訳は聞こえない人と聞こえる人の双方向のコミュニケーションを可能にする大切な役割を担っています。
「手話ができる」と「手話通訳ができる」は別
手話ができたら手話通訳ができるという誤解をいろいろな場面で見かけます。
例えば、あなたが英会話を学んでいます。旅行先でショッピングやレストランなどでの日常会話には困らないとします。では、重要な会議や講演会で通訳ができますか?通訳をするためには高い英語力と日本語力が求められますよね。
これと同じように、「手話で日常会話ができる」のと「日本語と手話の通訳ができる」ということは別のことなのです。
手話通訳者は、手話という言語をしっかりと身につけ、通訳の考え方や技術について専門的に学び、話し手の言葉をしっかりと聞き、内容を正しく要点を漏らさずに理解し、記憶して適切な手話を選んで翻訳し、正確、かつ的確に伝えなければなりません。逆に、手話から日本語に通訳することもあります。その通訳の課程を確実に行える技術の学習と訓練をします。
また、言語間の通訳だけでなく、聴覚障害者の生活や文化、歴史、障害者福祉などを理解することや、聴覚障害者との信頼関係を築くことも大切です。
時々、手話通訳の依頼先が分からない企業や団体が、手話学習者に講演会などの手話通訳を依頼し、それを安易に引き受けてしまってトラブルになったという話を聞くことがあります。
医療機関で、手話通訳の資格の無い手話サークルに通っている職員に手話通訳をさせたという話を聞くこともあります。日常会話では無く、診察などでの大切な内容が正しく伝わっていなかったら、それが命に関わることなら、誰が責任を取るのでしょうか?
手話を学ぶ以上、手話通訳と手話学習者の線引きは知っておく必要があります。
手話通訳になるにはどこで学べばいい?
手話についてで書いたように、手話を学ぶ方法は色々とあります。
手話通訳には手話通訳者と手話通訳士があります。
<手話通訳者>
『手話通訳者』を目指す方の学び方としてもっとも一般的なのは、自治体などが開催する手話講習会に通うことです。まず始めに、お住まいの市町村などで開催される手話奉仕員養成カリキュラム〔入門課程35時間、基礎課程45時間〕を修了します。
- 入門基礎講座などとして開催されているかもしれません。
- 手話奉仕員(聴覚障害者等との交流活動の促進、市町村の広報活動などの支援者として期待される日常会話程度の手話表現技術を習得した者)としての登録手話通訳制度が残っている地域もあります。
- 自治体によりカリキュラムが違うことがあります。
- 各課程に試験などを実施している自治体もあります
- 都道府県、指定都市、中核市などにより実施形態やカリキュラムが違うことがあります。
- 国立リハビリテーションセンターなどの養成機関を修了された方は登録試験からとなる地域が多いようです。登録試験地の聴覚障害者情報提供施設にお問い合わせください。
特定非営利活動法人全国聴覚障害者情報提供施設一覧 (www.zencho.or.jp/link)
<手話通訳士>
手話通訳者とは別に厚生労働省認可の国家資格に準じる資格があります。1989年(平成元年)に開始された手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)に合格し、登録した者がなることができる『手話通訳士』です。
手話通訳士は政見放送や裁判などの一部の公的機関での手話通訳業務も担うことが出来ます。
手話通訳士の人数は全国で3,826名(2020年6月15日現在)。合格率は第1回~32回の平均が15%で、福祉系の資格としては最も難しい資格といえるのかもしれません。
社会福祉法人聴力障害者情報文化センター(手話通訳士試験合格者推移)
(http://www.jyoubun-center.or.jp/wp-content/themes/joubun/pdf/slit/31_teisei_gaikyo.pdf)
手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)の詳細については社会福祉法人聴力障害者情報文化センターのホームページ(www.jyoubun-center.or.jp/slit/about/)をご確認ください。
手話検定試験は手話通訳の資格ではない
間違われている方が多いのでここに書きますが、社会福祉法人全国手話研修センターの実施する全国手話検定試験についてはコミュニケーション能力を評価認定するものであり、手話通訳の資格ではありません。英検と同じようなスキルとして履歴書に書くことはできます。ご自分の手話会話のレベルの確認にどんどんチャレンジしてみましょう。
全国手話研修センター (http://kentei.com-sagano.com/)
参考:- 手話通訳Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ『ホップ ステップ ジャンプ 指導書』
- 発行 社会福祉法人全国手話研修センター