このサイトの目的
『1000人のうち3人』
この数字は、日本における聴覚障害者の割合です。※
しかしこれは、身体障害者手帳を取得した人と、「身体障害者福祉法」が掲げる障害に該当する人のみを対象にしています。加齢による衰えで耳が遠くなった「老人性難聴」、人より聴こえづらいけど身体障害者手帳を取得していない・取得できない人を含めると、実際にはもっと多くの人が聴こえに悩まされています。
耳が聴こえない・聴こえにくいということは、外見で判断ができません。ある日、あなたが自転車に乗っていて、目の前を歩いている人にチリンチリンとベルを鳴らしているのに、よけてくれなかったとします。あなたは「無視された」と思うかもしれません。しかし実際は、耳が聴こえていなかっただけかもしれないのです。このように、気が付いていないだけであなたの身近にも聴こえない人はいます。
では、今までは身近にいなかったけれど、今日会った人がたまたま、耳が聴こえない人だと分かったとしましょう。あなたは、どうコミュニケーションを取りますか?どう接したらよいと思いますか?
当サイトを運営している一般社団法人4Heartsの代表は、生まれつき重度の聴覚障害をもっています。コミュニケーションや人間関係にも悩んだり、教育、就職や結婚などそれぞれのライフステージにおける悩みにも向き合ってきました。決して平坦な道のりではなかったです。それでも、この経験を活かしたいという思いを周囲に話すようになったとき、聴こえる聴こえない関係なく多くの方が、私たちに共感し支援・協力をしてくださいました。
このポータルサイトは、そうしてできたのです。
このサイトを見に来てくださった方の中には、聴こえる聴こえない関係なく、様々な困りごとを抱えて来られた人もいるかもしれません。あるいは、困りごとや悩みが漠然としていて、うまく言葉にできないまま、もやもやとしたものを抱えている人もいらっしゃるでしょう。
どうかその悩みを、ひとりで抱えないでください。
当サイトが、その”こころ”の中にある感情をご自身の言葉で表現できるよう、そして、ロールモデルを見つけたり、解決に向けた情報が得られるよう、お手伝いができたらと願っています。
一般社団法人 4Hearts
みみとこころのポータルサイト
当サイトは、令和2年度茅ヶ崎市 市民活動推進補助制度 市民活動げんき基金補助事業 スタート支援を受け、作成されました。
- ※出典 厚生労働省:平成28 年生活のしづらさなどに関する調査
(全国在宅障害児・者等実態調査)結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/seikatsu_chousa_b_h28.pdf
聴覚障害の子供を持つご両親・家族方へ
お子様が聴覚障害をもっていると分かったとき、まずは情報を集めようと思われる方が多いと思います。受診した医師、お住まいの地方自治体、保健センターや児童相談所などで色々とお話を聞くこともあるかもしれません。しかし、以前ほどではありませんが、育児相談の専門家だからといって聴覚障害とその実態をよく理解していらっしゃる方は、お世辞にも多いとは言えません。また、障害のある個所や程度、お子様の性格、環境などにもよって、関わり方もひとりひとり細かく変わってきます。
また、同じ聴覚障害児を持つ親御さん同士で情報交換をしたくても、どこに行けば会えるのかもよく分からない。たとえ会えたとしても、お住まいの地域の中では人数も限られるでしょう。お子様にとってのロールモデルとなる人を見つけることは、あまり容易くはありません。さらに、多くの情報や機会は都市部に集まり、まだまだ情報や選択肢の地域格差は大きいと言わざるを得ません。
当サイトでは、少しでもその格差を埋めるため、そしてお子様にとっての選択肢を増やすために、お手伝いが出来たらと考えています。
聴覚障害者を雇用もしくは雇用を検討されている企業の皆様へ
近年、ダイバーシティの観点からも障害者の活躍が期待されています。障害者雇用促進法が改正され、法定雇用率も段階的に上がっています。そんな中で、障害者採用を行う上で意識しなければならないポイントや、採用後の接し方について悩まれる企業も多いと聞きます。
特に聴覚障害者は、他の部位の障害者に比べて職場定着率がとても低いと言われています。※
「聴こえないから筆談をすればよい」「会議のときに配慮すればよい」といったステレオタイプな思い込みが、当事者の職場での自己実現と職場定着意欲を削ぐことにもなりかねません。どういったサポートをしながら彼らの活躍を後押しすればよいのかといった知識もないままに、対応を現場に丸投げしてしまう状況も多くあります。
聴こえないということはどういうことなのか、本当の情報保障とは何なのか。そういった知識と深い理解に基づいた支援体制は、行政や就労支援機関においてすら、あまり充実しているとは言えません。
当サイトでは、少しでも聴覚障害就労者の活躍を後押しできるよう、企業様への「就労支援のロールモデル」を多く提案したいと考えています。現場の負担を軽くし、当事者との双方向の発展的な活躍を目指すお手伝いがしたいと考えています。
- ※高瀬健一他 (2017) 「障害者の就業状況等に関する調査研究」独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 調査研究報告書No.137
岩山誠(2013) 「聴覚障害者の職場定着に向けた取り組みの包括的枠組みに関する考察」地域政策科学研究10号
聴覚障害者の方へ
近年、音声認識技術が向上し、情報保障サポートテクノロジーの発展も目覚ましいものがあります。また、社会の理解も進み、欠格条項も緩和され職業制限が少なくなったこともあり、聴覚障害者が社会で活躍するハードルも昔に比べてぐっと低くなっています。
現在の恩恵は、過去の先人が文字通り血と涙を流し勝ち得てきた“今”です。ほんの数十年前までは考えられなかったことです。
しかし、まだまだ世間には聴覚障害の本質までは伝えきれていません。
「自分には何が出来て何が出来ないのか」
「何を助けて欲しいのか」
「何なら自分にもできるのか」
「私にはこんな可能性がある」
「私はこれが好きだ」
「私の性自認はこうだ」・・・
当サイトでは、そういった自分の気持ちや想い、どういった配慮が必要なのかといったことを、自分の言葉で周囲に伝えられるよう、こころの言語化のお手伝いをしたいと考えています。
そしてその際、ただ言葉にして伝えるだけではなく、自分も他者もプラスとして受け入れられるように伝える工夫をしなければいけません。一方的な配慮や権利の要求は「面倒くさい人」というレッテルを貼られ、隅に押しやられて終わってしまうことがよくあります。そうなれば、聴覚障害コミュニティの中だけで閉じがちになり、あなたの願いや可能性は、陽の目を見なくなるのです。
こんなもったいないことはありません。
SNSの発達で、一億総発信の時代になりました。個の発信力が問われてきます。これからはLGBTQ、障害者、外国人といった枠組みのダイバーシティではなく、『視点のダイバーシティ』が求められます。
あなたはどんな人で、どんな提案が出来て、どんな可能性をもって社会と向き合えるのか。当サイトで、広い視野で社会を捉え、ご自身の可能性を探ってみませんか。
「障害」という表記について
「障害」、「障碍」、「障がい」などと様々な表記を目にしますが、聴覚障害当事者が代表でもある一般社団法人4Heartsとしては「障害」の表記を採ります。
「差別」「偏見」とは何か?ということを、一緒に紐解いてみましょう。
差別・・・偏見や先入観などをもとに、特定の人々に対して不利益・不平等な扱いをすること。また、その扱い。(大辞林 第三版より)
偏見・・・ある対象、人、集団などに対して、十分な根拠なしにもたれる、かたよった判断、意見などをさす。このような判断や意見は強固なものであり、それらが誤っていることを示す証拠をみせられても容易に変らない場合が多い。(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
正当な理由もなく、特定の人々が商品やサービス、制度や教育から排除されてしまうことをさす『差別』は、当然あってはならないことです。2013年6月19日に『障害者差別解消法』が成立し、不当な差別的取り扱い・合理的配慮を行わないことを法で禁止しています。
では、「偏見」に関してはどうでしょうか。これはその人の心の中の問題であり、他者が深く踏み込むことは難しい面があります。それぞれの置かれた環境や、人と分かりあう機会の多寡(多いか少ないか)によって価値観が形成される側面があるからです。
そう考えたとき、いくら「障害」の表記に、右に倣えで表向きの配慮を示したとしても、心の中の偏見が根強ければ、いずれそれは差別の芽となりえるのではないでしょうか。
「障害」は本人にあるのではなく、社会の側にあるとも言われます。
私たち一般社団法人4Heartsは偏見を少しでも少なくできるよう、様々な生きざまやストーリーを提供し、私たちの生きる世界には真に多様な人がいるのだと、1人でも多くの人に伝えていくことが果たすべき使命だと考えています。