小宮山日記(3)

2025年夏からアメリカ・ワシントンにあるギャローデット大学(Gallaudet University)へ、社会人として留学している小宮山さん。 世界でも数少ない“聴覚障害者のための大学”で学ぶその挑戦を、コラムとして届けていきます。
日本とは異なる文化や環境の中で、小宮山さんが何を感じ、どんな視点を持つのか。等身大の言葉で綴られるリアルな声を、どうぞお楽しみに。

最近は、8月からのアメリカ留学に向けて、ビザ面接の準備やTOEFLの受験等でバタバタしている。
何だかんだ落ち着かない毎日だけど、その中でも「自分は何を学びたくて、帰国後にどんなことをやりたいのか」が少しずつはっきりしてきた気がする。正直、準備は大変だけど、ちょっと一息つきながら、この過程も楽しめたらいいなと思っている。そんなわけで、今回は大学時代に行った実習について書いてみようと思う。

実習先は、聴覚障害のある方々の就労移行支援事業所であった。そこは、大学の先輩も実習していたところで、当時の理事長さんが「良い経験になるよ」と快く受け入れてくれて、約1ヶ月間通うことができた。自宅から電車で30分くらいの距離だったため、帰ってからも実習レポートを書いたり、次の日の準備をしたりする余裕があったのも非常にありがたかった。利用者は登録上20人ぐらいいたけど、実際に通っていたのは10人前後。聴覚障害だけの人もいれば、精神障害や発達障害を併せ持っている人もいたし、コミュニケーション方法もバラバラ。口話で話す人もいれば、日本手話または日本語対応手話を使う人もいた。それぞれの聞こえの程度も、障害に対する捉え方も、家族との関係も違っていて、「この人にはどんなサポートが合ってるんだろう?」って毎日考えさせられた。

私が担当したのは、利用者の記録、プログラムのサポート、面接練習、エントリーシートの添削等々。どれもすごく良い勉強になったけど、中でも難しかったのは面接練習だった。
というのも、利用者の多くが「自分は聞こえないから手話通訳をつけてほしい」って一方的な伝え方をしていた。だけど、現実的には「通訳を毎回呼ぶのは厳しい」「予算の関係で難しい」って企業側に言われる可能性もある。

そのため、「それだと企業としては難しいかも…」等意地悪な質問を投げかけてみて、「じゃあ他にどんな伝え方ができるのか?」「どうやったら伝わるのか?」って一緒に考えてもらうようにした。
とはいえ、自分はまだ学生だったし、社会経験もない中でどうアドバイスすればいいのか分からなくて、すごくもどかしかったり…。

あと、自分のことを振り返ってみると、「自分はどこまで聞こえてないのか」「どんな時に情報を取りこぼしてるのか」って実はちゃんと分かっていなかったなと気付かされた。例えば、日本人の聴者がアメリカに行って、英語で会話しながら「分かったつもり」になってるのに、実は全然理解できてなかった…みたいな感覚に近いのかもしれない。 「聞こえたふり」「分かったふり」って、ついついやってしまうこともある。だけどそれって、後から誤解や孤立につながって、職場で居づらくなってしまうこともあったりする。だからこそ、「自分が何に困ってるのか」「どうサポートしてほしいのか」をちゃんと理解して伝えるスキルって、本当に大事なんだなって。

書き出すと止まらなくなりそうなので、続きはまた次回。

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